INTERVIEW/
EVENT REPORT

MASH HUNT
MASH HUNT

2019.12.01

ARTIST INTERVIEW

「MASH FIGHT! Vol.7」でグランプリを受賞したユレニワに迫る!
メンバー4人が考える現時点でのユレニワとは――

昨年12月、MASH A&Rによるオーディション「MASH FIGHT! Vol.7」でグランプリを受賞したユレニワ。彼らの音楽は、日常の闇の中でもがくような苦しさや焦りが生々しく反映され、それを描いた時の衝動をそのまま切り取ったようなライヴパフォーマンスでは、その熱量の高さに圧倒されしばらく目を離すことができないほど。しかし、11月27日にリリースされたシングル『Bianca』の2曲を聴いても明らかなのだが、彼らが描く世界にはどこかしら人肌の温もりを感じることがあって、それは愛というものが日常からは切っても切り離せないものだと捉えているからなのかもしれない。2016年3月に千葉県で結成されたユレニワがいかにして始まったのか、そして、現時点で彼が見るものとは――メンバー全員インタヴューで紐解く。

 

元々は大会で優勝するってことを目的にしてたんですけど、
4人で音を合わせてみたら『案外いいじゃん!』って思えて

■まずはユレニワがどうやって誕生したのか教えてもらえますか?
レジナルド(B&Cho)「中学の時に僕とシロが同じ学校だったんですけど、中学2年生で同じクラスになって仲よくなったんですよ。そこからシロの家に遊びに行ったりとかして――僕はそれまで元々そんなに音楽を聴いてなかったんですけど、シロが当時僕は知らなかったクリープハイプとかRADWIMPSとかスピッツとか、いろんな音楽を聴かせてくれて。そこで『こういう音楽あるんだ!』って知ることができたんです。そしたら、少ししてシロから『バンドやらない?』って言われて、それでバンドを始めた感じですね。だから最初はシロと僕ともうひとりで3ピースバンドを組んでました」

■シロさんがバンドに興味を持ったのはどうしてだったんですか。
シロナカムラ(Vo&G)「きっかけがふたつあるんですけど、まずひとつ目が祖父が趣味でやってたギターが家にあったことですね。ただのフォークギターとエレキギターが1本あったんですけど、それでまず音楽に興味が生まれて。ふたつ目は、明確になんでかわからないし、今考えればっていう感じなんですけどThe Offspringの音源を聴いて『すげぇ……』ってなったのが興味に拍車をかけたきっかけかなと思います。それで、バンドと言われるいろんな音楽とか、それに近いポップスを聴き始めて……さっき言ってたように日本のバンドをレジと一緒に聴き漁っていくうちに、当時インディーズだったクリープハイプや東京事変だったり、強烈な歌詞を残しながらメロウな曲調にまとめたり、時には曲調までも尖らせたりとか、そういう駆け引きが上手いバンドに憧れを強く持ってました。それで気づいたらどっぷりで自分でもやってみたいな、と」

■では中学生の時にシロさんとレジナルドさんが出会い、そこからレンジュさんと種谷さんが加入するまではどういう流れがあったんですか。
種谷佳輝(G&Cho)「僕とレンジュは共通の友人の紹介で出会って、ユレニワの前に違うバンドを組んでたんです。シロとレジは3ピースやってたけど、俺らは多い時だと6人組とかだっけ……?」
RENJU(Dr&Cho)「そうそう(笑)。でも、いろいろあって僕と種谷の間でケンカが起きて、ブチ解散しちゃって」

■ブチ解散?(笑)
種谷「ふたりとも高校1年生で尖り散らかしてたんですよ(笑)。だから僕が『やめる!』って言った時も、レンジュは『あぁ、やめろよ!!』みたいな感じで、最悪な解散の仕方をして」
RENJU「それで種谷も俺も他でバンドやり始めたんです。でもある日、6ピースバンド時代に対バン経験があったシロから『ある大会に出たいからバンドメンバー集めてて、ちょっとやってくんね?』って頼まれて、加入したんです。最初はレジも含めた3人だけだったんですけど、俺はどうしても4ピースがいいと思ってて――それはそれまでに僕が衝撃を受けたバンドがRADWIMPSとかスピッツで、彼らが4ピースだったっていうのと、そのほうが表現がいっぱいできるなと思ってたので――だから『どうしても4人がいい!』ってふたりに言って、バンド解散してあまり喋ってなかった空気の悪い中、種谷に『……やってよ』って頼んで(笑)、それでリードギターをやってもらったんですよ」
シロ「というか、今ユレニワ3年もやってるって、よくもってるよね(笑)」
種谷「そうだね(笑)」
シロ「それこそ、大会に出るために組んで、優勝できたら終わろうくらいの気持ちではあったから。びっくりだよね」
RENJU「完全な思い出作りだったもんね」

▶ RENJU(Dr&Cho)

■思い出作りに終わらなかったのは何でなんでしょう。
シロ「元々は大会で優勝するってことを目的にしてたので、それを達成しちゃったら他を求める向上心はないだろうし、そういう状態ならこのバンドを続ける必要はないって思ってたんですよね。でも4人で音を合わせてみたら『案外いいじゃん!』って思えて」
種谷「俺はその大会の決勝行ったくらいから、『これは今後も続くんだろうな』って自ずと思い始めてた」
RENJU「確かに。勝手にブッキングとかオッケーしちゃってたし(笑)」

■その後もオーディションって結構受けてたんですか?
RENJU「結構受けてますね。バンドの知名度を上げたかったんですよ。最初って、観てもらうことが大事だと思ってて。特に俺らはライヴがいいと思ってやってたからライヴを見てもらいたくて、とにかくいろんなところで目立って、いろんなオーディションに出て、『あ、ユレニワってバンド、前に見たことあるな』って認識されたかったんですよね」

■ライヴがいいって思える自信はどれくらいから持ち始めたんですか?
種谷「最初っからあったよね?」
RENJU「うん。最初っから傲慢ながら上手いなとは思ってた」
種谷「今見返したら全然上手くないんですけどね(笑)」
RENJU「でも、その自信のおかげで今めっちゃいいライヴしてると思うんで、傲慢な気持ちって大事だったなって思います」

■では、MASHもいろんな人に知って欲しいという目的で?
シロ「そうですね。ダメ元だったんですけど」
RENJU「僕らが応募した5月度の落ち方がひどかったもんね……」
種谷「リスナー投票で下から2位っていうね(笑)。だから『これは終わったオーディションだし切り替えていきましょう!』ってみんなで言って」
RENJU「すぐに『次何出る?』って言ってたもんね。でもその後も変わらずライヴやり続けてたら、MASHの方から『MASHセレクト枠でセミファイナルに出てもらえませんか?』っていうふうに連絡をいただいて、『よっしゃー!』ってなりました」
種谷「そうそう。そう言えば(MASH)受けてたか……って、その時には忘れてるくらいで。忘れた頃に来るもんなんだなって思ったけど、嬉しかったね」

 

ラヴソングだけは譲れないです。マイナスの部分にもプラスの部分にも隔てなく、
自分は愛が中心になって動いてるから歌にも反映されてるのかなと思います

■そんな感じだったんですね(笑)。結成当初のオーディションを受けた時から今ってユレニワの世界観はそこまで変わってないんですか?
シロ「俺は書きたいものを書き続けてきただけだからそんなに何か変わったとは思わないですね。特に、バンドをやりたいと思って組んだ当初から今と変わらないのは、不平不満を抱えがちだったんだなってことかな……」

■それは発散するところがなかったからなんですかね。
シロ「(不平不満を)誰かに言ってるつもりではあるんですけど、そういうことじゃなくて……自分も知らない自分がいるんだと思うんですよ。それっていうのは歌を書いて音源を作ったり、ライヴをやって人に見せたりして1個の作品を成功させる度に気づいちゃうことが多くて」

■作品にすることで思いを昇華できるというような?
シロ「そうですね」

■そうやってシロさんが歌にしていくものって不平不満よりも愛の歌のほうが多いなと思うんですけど、ご自身では自分で書くものの芯にずっとあるものって何だと思いますか。
シロ「そうですね。ラヴソングじゃないですかね。ラヴソングだけは譲れないです、どんな形に変わろうとも。単純にそういう性格なんですよ。きっと自分の生活の中で何ごとにも愛が中心に来ちゃってる節がある。それを自覚し始めたのは最近なんですけど……誰かを怒ったりするのも愛があるからだと思うし、そういうマイナスの部分にもプラスの部分にも隔てなく、自分は愛が中心になって動いてるから、それが歌にも反映されてるのかなと思います」
種谷「それって凄く自然なことだと思う。シロの歌って相当生活に寄り添ってるよね」

■というと?
種谷「僕、これまでずっと邦ロックとか、昔の日本のフォークソングとか日本語の曲ばっかり聴いてたんですけど、それを求めちゃう理由に、駅に向かう道とか、電車に乗ってる時とか、そういう場所で聴く曲は日本語だとちゃんと生活に寄り添ってくれる感覚があるからというのがあって。その中でもシロの歌は、表現方法は遠回しだったりするけど、それもある種生活のひと場面であるようなことだと思うし、それに対して世界観はストレートに伝わってきたりもする、その感覚っていうのが好きです」
シロ「ありがとう!」

▶ 種谷佳輝(G&Cho)

■種谷さんがおっしゃったようにシロさんの歌詞って生活に寄り添ってはいるんですけど、言葉は凄く詩的で日常では使わないような装飾された言葉が印象的で。これってシロさんから自然と溢れてくるものなのか、そういうものを理想として意識して綴っているのかどういう感じなんですか。
シロ「えっと……何かをイメージしてっていうよりは自分の中を模索して絞り出したのが今の歌詞だっていう感じはします。いろんな観点から歌詞を最終の仕上げに持っていくんですけど、たとえばひらがなの美しさ、カタカナの美しさ、漢字の美しさっていろいろあると思うんです。そういうことを加味して、曲を通して一番伝えたいことっていうのが曲ごとにあるんですけど、それをどこに入れていくかが非常に大事だと思ってます。あとは言葉遊びですね。それも、歌詞を見ないで聴いてる歌の印象はそれはそれでいいと思うんですけど、歌詞だけ見た時にどこまでいいものになっていくのかということを僕は常に考えてますね」

■11月27日にシングル『Bianca』がリリースされましたが、ここに収録されている2曲で言うとどういう部分なんでしょうか。
シロ「たとえば“Bianca”の1番のBメロの歌詞は<生活は幸福じゃないほうがいい>っていう語感があって、2番は<正解は報復じゃないくらいの愛>っていう、よくありがちな言葉をなんとなく噛み合わせて、そういうところをフックにしたりとか。あとは、意味を知ってる人が少ないだろうなっていう歌詞を入れるよさも俺はあると思ってて。たとえば“Lilac”に<ユートピア>っていう言葉が出てくるんですけど、<ユートピア>ってランチとかしてても普通は使わないじゃないですか。そういう言葉って意味を知ってる人には、その人なりの捉え方ができるし、まったく聞いたこともなかった人には調べさせたいっていうのもあるんですよね」

■なるほど。そうやってシロさんが描く愛って凄くロマンチックだなと思うことがあるんですけど、これは歌詞を見た時の印象を意識してのことなんですか?それともご自身の理想を描いてるんですか?
シロ「そうだなぁ……それは難しい質問かもしれない…………でもあんまり理想を描いたりとか、妄想のお話をしてるつもりはないんですよね。自分の中であくまで実体験というフィルターを通ったものがすべて歌になってる感覚なんです。だから聴き手によっては若干メルヘンだなっていう意見もあったりとか、ファンタジーっぽいとかっていうのがあるかもしんない。だとしてもあくまで現実に心を置いた状態なんだよっていうことはここでアウトプットしておきます」

 

音楽は僕らから個人に向けて発信してるものだと思ってるから、
ひとりでも多くの人に聴いて欲しいっていうのは、できるだけひとりでも救いたいっていう思いなんです

■わかりました。私はユレニワのパフォーマンスを昨年のMASH A&Rオーディションのセミファイナルで初めて見て、その後の決勝も含め、闇の中でもがくような衝動や熱量を感じたんですけど、今作2曲は凄く柔らかで木漏れ日が差し込むような温かさがあって、このバンドが一体どういうものなのか、現時点で定義するのは難しいなと思ったんです。皆さんはご自身でユレニワというものはどういうバンドだと思っていますか?

▶ レジナルド(B&Cho)

レジナルド「……僕はユレニワは面白いバンドだと思います!」
全員「(失笑)」
レジナルド「やっぱり曲とか歌詞とかにいろんなアイディアとか考えが詰め込まれてるバンドなんで、それで面白いバンドだなって僕は思いました」
RENJU「……(笑)。僕はユレニワはノージャンルで、作りたいものを作るバンドだと思います。というのも、ユレニワはこういうバンドっていうのを定めたくないんですよね。たとえば誰かが『こういう曲ができたからやろうぜ!』って持ってきたものを、他の3人に聴いてもらって『いいね、やろうよ!』ってなった曲をやる。だから、別にパンクとかシューゲイザーとか、ポップとか決めてなくて、その時できた曲を今できるものをユレニワでやろうよっていうのがあって――これは僕の主観なんですけど、ユレニワの音楽って難しい漢字とか言葉が出てきたりするし、ちょっと難しいところがあると思うんですよ。でも聴いてるうちに『いい曲だな、最強!』ってなる曲を作るバンドだと思っております」

■種谷さんはどうですか?
種谷「さっきレンジュが言ったように僕もユレニワには『聴くたびに味が出る』バンドだと思っていて。音の選び方ひとつ取っても、『ここでこの音来る?』っていうのとか、『メロもここで高くなるんだ!』とか、あとは歌詞の言い回しも、やっぱり一発聴いただけじゃ難解な部分も多いから、歌詞は歌詞カード見てもらいながら聴いて欲しいし――そういう掘っていけば掘っていくほど面白いバンドなんじゃないかなと思いますね」

■では最後にシロさんお願いします。
シロ「はい。ユレニワはまさに『革命児』だと思います。正直な話、今バンドがアイドル化してきたりとか、純粋にカッコいいと思えない音楽が流行してるなと思ってて、それってリスナーの耳がどんどん衰退してる部分もあると思うんです。ユレニワは『根本から俺がロックを変える!』とかそういうテーマを掲げるつもりはないんですけど、ただ、どっかしら些細な部分でそういうリスナーに対して革命を起こせる人間になりたい。そういうヤツらが今いないと、俺は日本の音楽がほんとに衰退の一途をたどっていくと思ってて。だからそういった意味で革命っていうのを掲げてます」

■それは、たとえばそうやって革命を起こしたいと思う人を支える立場ではなく、ご自分が表現者でありたいと思うのはどうしてなんですか?
シロ「うーん……俺しかやれるヤツがいないと思ってるからです。おごり高ぶってるとか言われてもしょうがないと思ってるんですけど、そういうふうにしか思えなくて…………」

▶ シロナカムラ(Vo&G)

■それは音楽を始めた当初から?
シロ「いや、初めは何も考えてないで音楽の楽しいっていう側面だけを掴み取って味わってたと思います。でも、徐々に徐々にだと思うんですけど、少しずつそういうのが蓄積されていって、今に至るのかなって。だから明日言ってることが全然違うかもしれないし、1年後、5年後、10年後言ってることがまったく変わるかもしれないんですけど、俺はそれでユレニワの形として受け取ってくれたら嬉しいなっていうくらいなんですけどね。元々このスタンスは変えてないし、今でもこの4人は完全にギリッギリのバランスで、1個でも方程式が崩れたらダメになっちゃうようなバンドだと思ってます。たまたま完成した、それこそ地球みたいなもんです」
全員「……ははははははははは!」
種谷「地球って(笑)。でも確かに今でも4人全員がちょっとずつ違う方向向いてるし、みんな同じ音楽をやりたいかって言われたら、もしかしたらそんなこともないと思ってて。だし、たぶんシロみたいな闘争心を全員が持ってるかって言われたら俺はそんなこともないと思ってて」
シロ「それは見ててわかる」
種谷「熱量とかは近しいものはありつつも、別に全員がそうあるべきではなくて、だからこそシロがソロプロジェクトでやるんじゃなくてバンドでやると面白いんだよね」
シロ「そうだね」

■では、最後に現時点の4人のヴィジョンがあれば教えてください。
シロ「わかりやすく言ったら武道館とか、メジャーデビューとかっていうのを目標にしてる人はいるとは思うんですけど、そういったヴィジョンにはほんっとに興味がなくて。というよりもひとりでも多くに聴いてもらうこと以外に何が必要なの?って俺は思ってるんですよ」
種谷「なんか武道館とかっていうのを目指す心持ちがあまりないのは、メンバーそれぞれが、音楽は僕らから個人に向けて発信してるものだと思ってるからじゃないかなと思います。だからひとりでも多くの人に聴いて欲しいっていうのは、多くの人を集めたいわけではなくて、できるだけひとりでも救いたいっていう思いなんですよね。それは、僕も音楽で救われたことがあったし、その時から、あれは僕だけが救われたんだと思ってるんです。だから、ユレニワは個人に向けた、個人を救う音楽をどんどん作っていきたいなと思いますね」

▼クレジット
テキスト=桂 季永  撮影=東美樹
HP jureniwa.jimdo.com

▼リリース情報
ユレニワ『Bianca
iTunesほか各主要配信サイトにて配信中/MASH A&R

1.Bianca
2.Lilac