2021.04.02
EVENT REPORT
3月27日(土)に東京・新宿LOFTにて開催された、MASH HUNT LIVE Vol.4 の模様をお届け。
MASH HUNT LIVE Vol.4 BEST ARTISTは
くだらない1日 に決定
グランプリに輝いた くだらない1日
THE ORAL CIGARETTESやフレデリック、Saucy Dogらが所属するプロダクション、MASH A&R。2012年以来オーディションによって新たな才能を発掘し、活動を展開している同社によるオーディション「MASH HUNT」、そのライヴ審査である「MASH HUNT LIVE vol.4」が3月27日(土)に東京・新宿LOFTで行われた。
当日は政府及び各自治体の定める条件やガイドラインを遵守し感染防止対策を徹底した上で有観客&オンラインで実施。MASH A&Rのスタッフによる審査に加えて観客からのWEB投票も行われ、BEST ARTISTを選出していった。その模様をレポートする。
MCは 芦沢ムネト が担当した
Halujio
トップバッターを飾ったのはHalujio。2018年結成、東京・府中発のスリーピースバンドだ。1曲目に披露したのは“春歌”。高畠大知(Vo&G)の張り裂けそうな歌、そしてその歌と同じ熱量で鳴らされる3人の演奏が感情溢れる様を示すように爆発していく。続く“無粋”では、オーディエンスに訴えかけるよう、歌詞の一語一語を噛み締めながら歌う高畠の歌唱が印象的だった。最後に「音楽をやる上で人がひとりでも救われたらいいなと思ってライヴをしています」と言い残し、赤いライトに照らされながら始まったのは“浅呼吸”。疾走感のあるサウンドの中でも言葉が埋もれないよう、観客一人ひとりの心に届けようという強い意志を感じさせるパフォーマンスだった。
SETLIST–
1.春歌
2.無粋
3.浅呼吸
南無阿部陀仏
2組目は南無阿部陀仏。2017年に高校の同級生で結成された、東京練馬発・全員10代のアロハ系ロックバンド。「ここに来た人すべてに最高のロックを!」という雄たけびと共に歌われたのは“アドベンチャークルージングパーティー”。ステージから落ちてしまうくらいの勢いで前のめりに、縦横無尽に駆け回り歌う、まえす(Vo&G)の姿に1曲目から観客の目は釘付けに。その流れで2曲目に披露されたのは、ベースの阿部が作ったというラヴソング“5時のチャイム”。「大好きな人を思い浮かべながら聴いてくれると」というコメントを添えて歌われた楽曲は、オーディエンス一人ひとりの顔を見ながら言葉を大切に届ける姿が印象的だった。ラストはアカペラで丸々サビを歌い切った後、4人の合唱へと鮮やかにシフトさせた“若者よ、耳を貸せ”。いくつになっても誰もが持っている情熱を呼び戻すような全力のパフォーマンスだった。
SETLIST–
1.アドベンチャークルージングパーティー
2.5時のチャイム
3.若者よ、耳を貸せ
最果テルーティン
続いて登場したのは最果テルーティン。「終わらせなければ始まらない」をテーマに、萩山百花を中心に活動するバンドだ。サポートメンバーふたりを迎えて挑んだこの日、まず力強い歌い出しで始めたのは“パステルカラー”。胸を締めつけるようなかすれる歌声が耳に残る。「こういう状況で、この先も一緒に頑張って上を目指そうって言ってた人達がどんどんいなくなって、音楽をやりたくないなと思ってた時期にMASH HUNTのライヴ審査の通知が来て。まだ音楽を辞めたくないな、まだ歌っていたいな、歌えると思いました」——そう言って奏でられたのは“いなくなったもの”。今にも泣き出しそうな声が示す切実な想いが、マーチングのようなドラム音と、つま弾くギターの音と共に伝わってくる。ひとりの物語が他の誰かの心の奥底を震わせる、今後に可能性を感じさせる15分だった。
SETLIST–
1.パステルカラー
2.卒業
3.いなくなったもの
くだらない1日
4組目は、くだらない1日。90年代のオルタナティヴロックに影響を受けた高値大輔(Vo)によるバンドだが、彼以外がサポートメンバーだということを忘れるほどの熱量で激情を迸らせ、会場の空気を一変。先の見えない日々への絶望を吐き出すような語りから始まった“消灯”から、荒々しい演奏の中でも美しいメロディラインが際立つ“レッドアイズブラックドラゴン”、そして“やるせない”でのネガティヴな感情をガソリンにすべてを曝け出すような歌い上げへと展開。その音によって周りの目を気にして胸の奥に隠していた怒りや悲しみを引っ張り出し、どうにか報われるものへと昇華させたい。そんな祈りを感じさせる4曲だった。
SETLIST–
1.消灯
2.レッドアイズブラックドラゴン
3.やるせない
4.激情部
nolala
5組目に登場したのは、2015年5月に結成されたスリーピースバンド、nolala。1曲目の“グッバイライアー”から、千陽(Vo&G)と美寿々(Vo&B)のツインヴォーカルが報われない恋心をドラマチックに描く。続く“いつかは”でも、過去に想いを馳せながら、時に切なく、時に力強い歌唱で物語を紡いでいった。「結成6年目、売れそうとか、ネクストブレイクとか散々言われてきた。今日は私達が守ってきたものが正しかったと証明できるチャンスの日だと思ってます」——そう言って最後に披露されたのは“ルームメイト”。これまで積み重ねてきた活動の日々を思い返したのか、千陽が思わず涙する場面もあった。揺れる心を丁寧に救い上げようとするツインヴォーカル、こみ上げる想いを切り取る力強いドラミング、3人のバンドアンサンブルが会場を優しく包み込んだ。
SETLIST–
1.グッバイライアー
2.いつかは
3.ルームメイト
藍色アポロ
オーディション・アクトの最後は、藍色アポロ。昨年3月、下北沢にて結成された4人組バンドだ。唸るようなギターの音で火蓋を切った“カゲロウ37℃”では、軽やかなギターリフが楽曲を先導し、場の空気を高揚させていく。サビでは自ずとオーディエンスの手が挙がるなど、音の力で観客の心を掴む様子が見えた。ナガイ(Vo&G)の歌声がストレートなエモーションを放つ“色褪せる”を経て、上手く表に出せないもどかしい感情を切り取った歌に寄り添う演奏が印象的な“mind”へとなだれ込み、開放された心を示すような爆発力のある力強い演奏を披露。結成1年ながらも安定感のある熱量高いパフォーマンスで幕を閉じた。
SETLIST–
1.カゲロウ37℃
2.色褪せる
3.mind
Panorama Panama Town
ライヴ審査終了後、ゲストアクトとしてPanorama Panama Townが登場。2020年は結成から活動を共にしてきたメンバーの脱退をはじめ大きな転機があったが、それを経て昨年末より石毛輝(the telephones、Yap!!!)をプロデュースに迎えた新曲群をリリースし、明確に新たなフェーズへと入っている3人。この日のライヴは、これまでの日々を置き去りにすることなく、すべてを未来へ繋げたいという意思がセットリストからも強く感じられた。まず1曲目に選んだのは彼らの原点である“SHINKAICHI”。どこか余裕も感じられる岩渕想太(Vo&G)の伸びやかな歌唱や、時に笑顔を見せながらメンバー同士が背を合わせて演奏を楽しむ姿が会場の空気をほぐしていく。様々な出来事が降りかかる中でもバンドを続けてきたからこその喜びを噛み締めるようなポジティヴなフィールが、楽曲群を実に気持ちよくグルーヴさせていく。中盤では4月7日にリリースされるEP『Rolling』から2曲を披露。いつまでも青くあり続けたいという想いを込めた“SO YOUNG”の演奏前には、自身がオーディションに出場した過去を振り返りながら今に対する想いを語った。
「2015年の夏に『MASH FIGHT!』に出たんですけど、その時は出るバンド全部に腹が立ってて。誰にも負けないし、勝ちたいなって想いを抱えてて。そこから6年くらい経って、久しぶりにオーディションを観てたんですけど、その時と変わらないなと思ったのは、早くライブがしたいなとか、俺らのほうがカッコいいやろって気持ちで。でも同時に、この湧き上がる気持ちとかエネルギーみたいなものをお客さんに届けたいと思ったのは6年の変化なのかなと思います」
6年前から変わらず持ち続ける情熱を爆発させるようなサウンドで始まったのは“MOMO”。聴き手の心をぶち抜くような浪越康平(G)の高速ギターリフや、かけていたサングラスを振り落とすほどに荒々しくベースを弾くタノアキヒコ(B)の姿など、その音とパフォーマンスが生み出す熱狂の渦に会場全体が飲まれていった。そして最後に披露されたのは、ずっしりと胸に響くベース音が支えとなる“Sad Good Night”。悲しい夜を超えた3人はしっかりと前を見据え、一歩ずつ歩みを進めている。そんな逞しさを感じさせるライヴだった。
SETLIST–
1.SHINKAICHI
2.いい趣味してるね
3.Rodeo
4.SO YOUNG
5.MOMO
6.Sad Good Night
審査は、会場およびスペシャアプリやLINE LIVE、YouTubeでライヴ審査を見守った観客によるWEB投票も踏まえつつ、MASH A&Rのスタッフ陣が歌唱力や演奏力、ライヴパフォーマンス、将来性など様々な観点から協議。結果、「MASH HUNT LIVE vol.4」のBEST ARTISTを勝ち取ったのは、くだらない1日。トロフィーと賞金20万円を獲得した。
なお、MASH HUNTの公式サイトでは、これまでMASHスタッフが毎月選出してきた数多くの「MASH PUSH!」のアーティストを紹介しているので、新たな才能、新たな音楽との出会いを楽しみに是非チェックして欲しい。
▼クレジット
テキスト=桂 季永 撮影=山川哲矢