INTERVIEW/
EVENT REPORT

MASH HUNT
MASH HUNT

2020.09.26

EVENT REPORT

9月21日(月・祝)オンラインサーキットフェス「NIPPON CALLING 2020」にてMASH HUNTコラボステージが開催された。その当日の模様をお届け!

【NIPPON CALLING 2020】MASH HUNT ステージ ライブレポート

渋谷、下北沢、新宿を拠点とする日本最大級のライヴサーキット「TOKYO CALLING」が、今年は新型コロナウィルスの影響により、日本全国のライヴハウスをつないだオンラインサーキットフェス「NIPPON CALLING 2020」として開催された。

9月21日、22日の2日間にわたり、全国51会場に204組のアーティストが出演したステージから、9月21日新宿LOFTbarで行なわれたNIPPON CALLINGとMASH HUNTのコラボステージの模様をレポートする。このステージには、THE ORAL CIGARETTESやフレデリック、Saucy Dogらが所属するプロダクション、MASH A&Rの所属アーティストおよび、MASH A&Rが務めるオーディション「MASH HUNT」のMASH PUSH!から計6組のバンドが出演。ジャンルの枠に縛られることなく、「自分たちにしか鳴らせない音楽」を追求する次世代ロックバンドによるスリリングな1日が繰り広げられた。

SEVENS

トップバッターは、内川留伽(Vo/Ba)と安藤颯馬(Dr)によるふたり組ロックバンドSEVENS。サーキットフェス初出演という彼らは、サポートギターを迎えた3人編成でステージに現れた。1曲目“Victory”はベースレスで演奏。強靭なリズムが牽引する無骨なバンドサウンドにのせて、抑揚の少ないメロディが転がる。続く、“リアライズ”では、内川の獰猛なベースラインが歪で不穏な世界観を作り上げていく。収縮と開放、荒々しさと洗練を内包しながら、独自のセンスで編み出されるその音は、シューゲイザーやニューウェイブ、ヒップホップ、ロックなど、様々なルーツを想像させる。中盤、コロナの自粛期間中に「未来の自分がいまの自分を見たときになんと思うか?」と問いかけながら作ったという新曲“タイムマシン”から“パイロット”への流れで、内川の眼光に鋭さが増した。訴えたのは、絶対に明るい未来を掴みとってやるという闘争心に満ちた想いだ。まだ結成から1年半のバンドだが、そのステージには明確に伝えるべきことが示されていた。

SETLIST–
1.Victory
2.リアライズ
3.Which one
4.Right now
5.タイムマシン
6.パイロット
7.No more stay

Ezoshika Gourmet Club

4人組ロックバンド Ezoshika Gourmet Clubは、池澤英(Vo/Gt/Key)の伸びやかな歌声が日常からのささやかな逃避行へと誘う“東京”から幕を開けた。日本語を大切にした90~00年代の邦ロックの影響を強く感じるエゾシカのステージは、まず何よりも音楽を楽しむムードが隅々まで溢れていた。昨年の「MASH HUNT LIVE Vol.1」でBEST ARTISTに選出されるきっかけになった“春風”のほか、ループするリフに遊び心がある“猫と占いと家具屋”、ひと筋縄ではいかない巧みなバンドサウンドに惹き込まれる“青山通り”など、メンバー全員の個性を最大限に活かしたアレンジに知性とユーモアが光る。人懐こいメロディのセンスも抜群だ。MCでは、10月21日に初の全国流通盤ミニアルバム『モミジノススメ』をリリースすることを伝えると、そこに収録され、「バージョン3」へと生まれ変わったという“昨日の月にさまよえば”、さらに新曲“六畳間のヒーロー。”を届けて、終演。ベースとギターがユニゾンしながら転調し、楽しげなソロまわしへとつないだラストは、ロックバンドだけが辿り着くことのできる最高のフィナーレだった。

SETLIST–
1.東京
2.春風
3.猫と占いと家具屋
4.青山通り
5.昨日の月にさまよえば
6.六畳間のヒーロー。

SASORI

キーボードを擁する多彩なアプローチで曲ごとにまったく異なる世界を描き上げたのは“エクスペリメンタルポップバンド”を自称する男女混成5人組、SASORI。バキバキのシンセが絡み合うトリッキーなロックナンバー“Storm Girl”をはじめ、MK(Gt)がラップをのせたR&Bテイスト“Night Safari”、エレクトリックなポップワールドを作り上げた“Petal #04”へと、30分の持ち時間で次々に表情を変えていく。そのすべてを揺るぎない「SASORIの音楽」とし成立させるのが、ボーカル・小杉真咲の存在感だった。ときにギターを持ち、ときにスタンドマイクで、曲に感情移入する小杉の歌には、空間を一瞬で支配する独特の魅力がある。夏の切ない別れを描いた、8月31日に配信リリースされたばかりのミディアムバラード“Dolphin”のあと、透明感と衝動、美しさと激情を湛えて最高点へと上り詰めたラストナンバー“FLASH/閃光”は鮮烈。音楽という宇宙を自由に泳ぎまわるSASORIというバンドのポテンシャルはまだまだ底が知れない。

SETLIST–
1.Storm Girl
2.Night Safari
3.Petal #04
4.Dolphin
5.FLASH/閃光

ユレニワ

   

制御不能の感情をまるごとぶつけるパフォーマンスでロックの何たるかをステージに刻みつけたのは、2018年MASH A&Rオーディションのグランプリバンド・ユレニワだ。激しくも繊細なメロディを紡ぐ“Bianca”を皮切りに、ステージ上で互いがぶつかり合いながら熱い演奏を畳みかけていく。本能のままに顔を歪め、マイクに噛みつくように歌を吐き出すボーカル・シロナカムラ(Vo/Gt)の佇まいが不敵でいい。パンキッシュなビートで駆け抜けた“遺書”では、あまりに激しいプレイにシロの弦が切れる場面も。すかさず楽器隊の3人がセッションで場をつないだ。中盤、幻想的なSE“fusée 101”から、RENJU(Dr)が長髪を振り乱しながら大きなリズムを刻んだ“まぼろしの夜に”で、「死」への畏怖を包容力のあるメロディで届けると、ラストは「好きな人に贈る歌です」と言って、“バージン輿論”へ。勢いのままマイクスタンドをなぎ倒したシロは、隣にある種谷佳輝(Gt)のマイクを使って、「ニッポンコーリング!」と絶叫。愛に根差した歌に全力を捧げたステージに、ライヴへの絶対の自信を誇るバンドの本気を見た。

SETLIST–
1.Bianca
2.遺書
3.Cherie
4.fusée 101
5.まぼろしの夜に
6.バージン輿論

Organic Call

直前のリハーサルから丁寧に出音の確認を重ねていたOrganic Call。ヒラタナオヤ(Vo/Gt)、カワカミトモキ(Gt)、植木貴士(Ba)、きっつー(Dr)の4人がこぶしを突き合わせると、いきなり最高潮のテンションで“茜色、空に灯す”を投下した。衒いのない王道のギターロック。そこにのるヒラタの低音ボーカルに安心感がある。MCでは、ヒラタが「他人から見たら小さいことでも、その幸せを掬い上げていきたい。そんな日常を忘れないように」と伝え、このライヴの前日(9月20日)にワンコイン・シングルとしてリリースされたバラード曲“彗星のよう”を届けると、逃れられない変化を滔々と歌い上げた“朝焼けに染まった街へ”、悲しみ夜を越えて生き続けようと訴える“愛おしき日々たちへ”へと畳みかけたクライマックスの展開は熱かった。それは、今日と地続きにあるはずの明日を懸命に信じようとする歌たちだ。最後は、ステージから転げ落ちたカワカミトモキが床に寝転んだままギター弾くという熱演を見せて、終演。4人が一丸となって生み出した熱量の高いステージは、音源から想像する以上にアグレッシヴだった。

SETLIST–
1.茜色、空に灯す
2.海が見える街
3.彗星のよう
4.朝焼けに染まった街へ
5.愛おしき日々たちへ

YAJICO GIRL

トリを飾ったのは2016年のMASH A&R オーディションでグランプリを獲得したYAJICO GIRLだ。LOFTbarのステージには乗り切らない楽器編成ということもあり、吉見和起(Gt)と榎本陸(Gt)はステージからハミ出た変則的なポジションでスタンバイ。楽器隊が演奏をはじめるなか、四方颯人(Vo)が登場すると、“2019”を皮切りに自然と体が揺れる心地好い空間を作り上げていく。古谷駿(Dr)が叩き出すシャープなドラムが映える、音数の少ないグルーヴにのせた“街の中で”や、自粛期間中に感じたという心の揺らぎに、吉見の味わい深いギターが寄り添った“WAV”など、今年に入ってからリリースされた楽曲を軸にライヴは進んだ。ほとんどMCはなし。6曲を畳みかけたあと、四方が「ニッポンコーリング、呼んでくれて、ありがとうございました」と手短に挨拶をすると、柔らかなサウンドが次第にライヴならではの熱を帯びていく“ニュータウン”で、終演。昨年リリースされた『インドア』で大胆な進化を遂げて以降、日常で感じる孤独や違和感、焦燥、不安、やるせなさといった様々な感情を同時代的なサウンドと共振させ、丁寧に心の輪郭を描き出してきたYAJICO GIRL。その現在進行形の今こそいちばんかっこいいと証明するステージだった。

SETLIST–
1.2019
2.街の中で
3.WAV
4.NIGHTS
5.セゾン
6.熱が醒めるまで
7.ニュータウン

今回開催された「NIPPON CALLING 2020」※9/21(月・祝)公演 は9/28(月)23:59までアーカイブ配信が視聴可能となっている。MASH HUNTコラボステージだけでなく、この機会に更に新しい音楽と出会う場として是非お楽しみ頂きたい。

「NIPPON CALLING 2020」オフィシャルサイト
https://nippon-calling.jp

「MASH HUNT」は現在も引き続きエントリーを受付中、次のライヴ審査「MASH HUNT LIVE vol.4」は2021年3月の開催を予定している。新たな才能、新たな音楽との出会いを楽しみに、毎月「MASH HUNT」の公式サイトで紹介されていく「MASH PUSH!」のアーティスト達を是非チェックして欲しい。

▼クレジット
テキスト=秦 理絵 撮影=白石 達也