INTERVIEW/
EVENT REPORT

MASH HUNT
MASH HUNT

2020.09.14

EVENT REPORT

9月11日(金)に東京・TSUTAYA O-Crestにて開催された、MASH HUNT LIVE Vol.3 の模様をお届け。

MASH HUNT LIVE Vol.3 BEST ARTISTは 声にならないよ に決定


グランプリに輝いた 声にならないよ

THE ORAL CIGARETTESやフレデリック、Saucy Dogらが所属するプロダクション、MASH A&R。2012年以来オーディションによって新たな才能を発掘し、活動を展開している同社が2019年からオーディション形態を変更。1年に1度“グランプリアーティスト”を決定してきたこれまでの「MASH FIGHT!」から、より多くの才能を音楽ファンに紹介していくべく、年間を通して継続的に音源審査を行いながら、4ヵ月に1度のライヴ審査で“BEST ARTIST”を決定していく「MASH HUNT」へとリニューアルを果たした。

MCは 芦沢ムネト が担当した。

その第3回目のライヴ審査となる「MASH HUNT LIVE vol.3」が9月11日(金)に東京・TSUTAYA O-Crestで行われた。当日は政府及び各自治体の定める条件やガイドラインを遵守し感染対策に最大限努めた上で、各出演者がライヴを行いつつ、現地ならびにオンラインでのライヴ審査を行った。審査はMASH A&Rのスタッフ他、観客からのWEB投票も実施され、BEST ARTISTを選出していった。その模様をレポートする。

ハシビロコウズ

MCの芦沢ムネトが進行を務める中、ライヴ審査のトップバッターを飾ったのはハシビロコウズ。2018年結成、海や宇宙をテーマに楽曲を制作するスリーピースバンドだ。細やかなリズムと美しく歪むギターに凛としたピアノの音が鳴り響き、繊細に構築されていく音像の中を泳ぐようにヴォーカル清水の歌声が伸びてゆく。強く地を蹴るようなドラムが確かな推進力をもつ2曲目の“アースアリウム”では、ゆらめく水面の輝きが乱反射するような幻想的で美しいサウンドスケープを現出させる一方で、ラストにかけて内からこみ上げる熱さを感じさせる歌唱で存在感を示した。

SETLIST–
1.デジタルネコザメ
2.アースアリウム

alcatrick

2組目はalcatrick。「飾らない等身大の感情を音と声で」をテーマに、2019年8月頃より下北沢を拠点に活動する4人組バンド。サビでは張り裂けそうな声で歌い叫ぶ “LOUP”を皮切りに、熱量の高い直情的なパフォーマンスを繰り広げていく。飾らず愚直に想いを放つようなヴォーカルと、その歌を確かに支えようとする楽器隊。3曲目“オリーブ”の前には、ヴォーカルの佐藤が「俺達の全部をここにぶちこみます!」と言い放ち、荒削りながらも聴く者の感情を揺さぶる絶唱と疾走感のある演奏を展開、最後まで熱量を保ったまま全力のプレイで締め括った。

SETLIST–
1.LOUP
2.tomoshibi
3.オリーブ

リフの惑星

続いて登場したのはリフの惑星。元the ogtzの緒方とThe SALOVERSの小林を中心に2016年秋結成され、その後大月(G)、松丸(Dr)を迎え現在の4人編成になったという彼らは、タイトなリズム隊と徐々にボルテージを上げていくヴォーカルが印象的な“フライベイビー”、The Kinksの名曲“You Really Got Me”をオマージュしたと思われる“RATATAT”と、UKロックからの影響を色濃く感じさせるロックナンバーを投下。ラストを飾った“MUSIC”はバンド名の通り繰り返されるハードなギターリフが印象的で、それぞれの確かなプレイと情熱的ながらもコントロールを失わない歌唱が際立つ演奏で安定のステージングを見せた。

SETLIST–
1.フライベイビー
2.RATATAT
3.MUSIC

Mercy Woodpecker

「MASH HUNT LIVE」は毎回、MASH A&Rスタッフによる選考と共に、リスナーによる一般投票で1位に選ばれたアーティストにも出場権が与えられるが、今回のリスナー投票1位はこのバンド、Mercy Woodpecker。熊本で活動を行う4人組ギターロックバンドだ。メロディアスなギターソロが印象的な“empty”に始まり、「自分の中の嫌いな自分をぶっ壊すための歌です」と言って披露した2曲目“subliminal”では、ネガティヴな想いをガソリンにして青い炎を灯すような熱のあるライヴを展開。この国のギターロックが培ってきた養分を吸収した上で、自分達なりに表現したいもの、伝えたいものを見据えている様が感じられる。ラストの“日陰に咲く”では、悲しみを光に変えて進みたいという想いを託した美しいメロディとヴォーカル直江のひと言ひと言噛み締めるような歌唱が、オーディエンスを魅了した。

SETLIST–
1.empty
2.subliminal
3.日陰に咲く

声にならないよ

オーディション・アクトの最後は、声にならないよ。2020年4月に「誰かの声にならない想いを代弁したい」という想いを持って結成された若宮めめ(Vo)と吉田寛彬(Pf)の2人組で、ギター、ベース、ドラムのサポートメンバーを含めた5人体制で挑んだ。結成からまだ間もないが、確かなソングライティングと繊細な心のひだを紐解くような歌が印象的なライヴを展開。若宮と吉田のピアノだけで始まった2曲目の“言葉の棘”では、ドラマティックな展開と共に、時に切実に、そして時に包み込むように歌う若宮の姿に惹きつけられる。ラストはセンチメンタリズムを湛えつつも明日を切り開く疾走感を携えた“soundless。中性的で透明度の高いハイトーンヴォイスとその声に寄り添うピアノ、サポート陣との息の合ったアンサンブルが歌に託した想いを表情豊かに彩り、聴き手の心に確かな印象を残したアクトだった。

SETLIST–
1.いつかの話
2.言葉の棘
3.soundless

ゲストアクト:パノラマパナマタウン

全5組によるライヴ審査終了後、登場したのは2015年度の「MASH FIGHT!」にてグランプリを獲得したパノラマパナマタウン。今年に入り、結成から活動を共にしてきたメンバーの脱退、ヴォーカル岩渕想太のポリープ切除手術と療養のための一時的な活動休止というバンドにとって重要な局面を抱えた彼らは、リスタートの場になるはずだった4月の日比谷野外大音楽堂での主催イベントが新型コロナウイルスの影響で中止となり、もどかしい状況であるのは間違いない。が、しかし。5月から新曲制作の模様を『PPT Online Studio』と銘打って配信、8月にはオンラインで新体制1発目のライヴを披露するなど、パノラマパナマタウンとして次のタームを切り開くべく精力的な日々を送っており、そんな中で9ヵ月ぶりに有観客のライヴハウスのステージに立ったこの日のライヴでは、その内に溜め込み続けた熱を確かな爆発力に変え、いつにも増して力強いパフォーマンスを見せつけた。ライヴのど頭で“SO YOUNG”、“Rodeo”と新曲を立て続けに披露したのは、現在の彼らの意気込みの表れだろう。バンド初期の楽曲“MOMO”も含めたセットリストは、デビュー以降の様々な経験と紆余曲折を経た上で、この期間に今も昔も変わらない音楽に対する情熱を確認し、明確な決意を持って次のフェーズへと踏み出した彼らの意志が見えるライヴだった。

SETLIST–
1.SO YOUNG
2.Rodeo
3.フカンショウ
4.パノラマパナマタウンのテーマ
5.ラプチャー
6.MOMO
7.いい趣味してるね

 

審査は、会場およびスペシャアプリやLINE LIVE、YouTubeでライヴ審査を見守った観客によるWEB投票も踏まえつつ、MASH A&Rのスタッフ陣が歌唱力や演奏力、ライヴパフォーマンス、将来性など様々な観点から協議、選考を行った。その結果、「MASH HUNT LIVE vol.3」のBEST ARTISTに選ばれたのは、声にならないよ。トロフィーと賞金20万円を獲得した。

「MASH HUNT」は現在も引き続きエントリーを受付中、次のライヴ審査「MASH HUNT LIVE vol.4」は2021年3月の開催を予定している。新たな才能、新たな音楽との出会いを楽しみに、毎月「MASH HUNT」の公式サイトで紹介されていく「MASH PUSH!」のアーティスト達を是非チェックして欲しい。

▼クレジット
テキスト=桂 季永 撮影=MASANORI FUJIKAWA、かわどう