2020.02.19
ARTIST INTERVIEW
ユレニワ、初の全国流通盤となるファーストアルバム『ピースの報せ』。
メンバー4人による全曲解説インタビューで紐解く、本作に込めた想いとは
千葉県発の4人組バンド、ユレニワ。結成当初から様々なコンテストやオーディションで実績を残し、2018年末にはMASH A&Rによる「MASH FIGHT! Vol.7」にてグランプリを獲得。そんな彼らにとって初の全国流通盤となるファーストアルバム『ピースの報せ』は、生と死という命題から独自の観点で根源的な愛を見つめ、そこに向かってバンドサウンドだけでなくシンセや打ち込み、ピアノやグロッケンなどをはじめとした多彩なアプローチを駆使した、非常にヴァラエティ豊かな作品である。特に元々は収録されるはずではなかった中盤のインスト曲からの壮大かつ神秘的な展開は非常にドラマチックで、このバンドが持つ多様な側面が違和感なく詰め込まれたアルバムだとも言えるだろう。メンバー4人全員による全曲解説で本作に込めた想いを徹底的に探った。
■まずはおひとりずつ、今回のアルバムを作ってみた感想から聞かせていただけますか。
シロナカムラ(Vo&G)「結構コンセプトも壮大だし、楽曲的にただのバンドサウンドじゃなくてピアノの音だったり音楽的なアプローチも増えて。それを要所要所に詰め込めたヴァラエティ豊富なアルバムだと思ってます」
レジナルド(B&Cho)「僕は前作(※自主制作の2ndミニアルバム『THE VIRGINISM』、現在は廃盤)を超えられたような気がして。あとはシロも話してくれたようにいろんな面白い要素が今作には詰まってるので、そういう意味では個人的にも成長できたかなという感じですかね」
種谷佳輝(G&Cho)「これまではライヴでやるためっていうのが第一にあった中で、今回はアルバムを作るのを目標にした楽曲作りをしたので、それが意外と今まではなかったかなって。だから全体像とかストーリー性を想像しながら作りましたね」
RENJU(Dr&Cho)「僕は前作とか前々作(※自主制作の1stミニアルバム『Verandah』、現在は廃盤)には全然ない作品に仕上がったなっていう意味ではめちゃくちゃ攻めたなっていうのはあって。それが聴いてくれる人にちゃんと届けばいいなと思ってます」
■今のお話にもあったように、ヴァラエティ豊かな作品になっていった背景には何か意識改革だったりディスカッションというものがあったのでしょうか?
シロ「というよりかは、もうなるべくしてその形に落ち着いたっていうほうが適切だなと思いますね。この楽曲をよくしていこうっていう想いの下に、単純にそれを突き詰めていったらこうなった。それが今の自分らの力というか作品に込められたなと思いますね」
1.革命児
■“革命児”という、ある意味1曲目にふさわしいタイトルからアルバムが始まりますが、この曲はどんなふうに生まれたんですか。
RENJU「この曲だけはセッションみたいな感じで作ったというか――元々あった曲なんですけど、スタジオで合わせて作った曲なんですよね」
■普段はセッションで作らないんですか?
種谷「今まではセッションで作ってたんですけど、今作からはパソコンと向き合っての作曲方法に変えたんです。でもそれ以前の作曲方法で作ったのがこの“革命児”ですね」
RENJU「セッションだとめちゃくちゃ遅くて、年に2、3曲しか作れなかったんですよ。それだとペースがよくないなっていうことで作り方を変えて。今作からは4人で部屋を借りてそこで作業するみたいな感じにしましたね」
■制作方法を変えてみて何か発見などはありました?
種谷「作りやすさはありますね。そもそも各人のルーツとかが違うんで、たぶん詰め込みたい要素とかもちょっとニュアンスが変わってたりするんですけど。それを4人でスタジオで爆音でやるっていうよりも、それぞれがやりたいことを見える形でできたので、それはよかったんじゃないかなと思います」
■原型となるデモはシロさんが?
シロ「そうです。弾き語りか何かのデモをみんなに渡したかな……」
RENJU「これ結構苦戦したよな」
種谷「1年くらいかかったよね。一度寝かせたというか、ボツになって保留になった時期もあって……」
■それを1曲目にしようと思ったのはどうしてだったんですか。
シロ「まず楽曲的にノリがいいっていうのは、全国流通盤の第一歩である1曲目で絶妙なテンションだなっていうところと、あと前から作ってあった曲ではあるんですけど、このアルバムに入れるってことで歌の意味が少し変わってきたりするんですよ。その中でこの曲は1曲目にふさわしいなって自分の中でなってきたので、みんなで話し合ってこうなりましたね」
2.遺書
■この曲はこれまでのユレニワにはなかった、凄くキャッチーで明るい曲調です。作曲をしたRENJUさんはどういうイメージで作っていったんですか?
RENJU「おっしゃってくれたようにとりあえずキャッチーな曲を作りたくて。あとの意味合いはシロ(歌詞)に任せようと思って作ったものなんですけど、歌詞を見た時に意外と気に入って。明るい曲に全然明るくない歌詞が乗っているその違和感が、いい意味でめちゃめちゃ気持ち悪くて」
シロ「やっぱりそこが面白いなっていうことを個人的に思ってて。この曲は最後のほうでガツンと大きなサビが来るんですけど、その時に転調をしていて。若干の強引さだけど、不愉快になるものではなくて。そこで曲としてハッとするのに、歌詞も<さよならが、この人生さ>っていう歌をぶつけるっていうところも結構大きな意図があって。やっぱりパンチがあるところで一番聴かせたい歌詞をちゃんと乗せられたんじゃないかなというか、そこは成功だと俺は思ってます」
■そもそもRENJUさんはどうしてキャッチーな曲を作りたいと思ったんでしょうか。
RENJU「まず作りたいから作ったっていうのがあるんですけど……でもこのポップをユレニワはどう調理してくれるのかなっていう期待もあって。たとえばこれを凄くライヴ感のあるゴリゴリなサウンドでやってくれるのかもしれないし、逆にこれをポップでちゃんとまとめるのかっていうところも見たかったって言うと上からですけど、そういう挑戦はしましたね」
シロ「アレンジは全員でやるからね」
■結果的にもの凄くいい塩梅でロックとポップが融合した楽曲になりましたよね。レジナルドさんと種谷さんはデモを受け取った段階ではどう思いましたか?
レジナルド「……正直ベースラインを作るのがめちゃくちゃ難しかったですね。こういう曲をやるのは初めてというか、今まであんまりやってこなかったので。だからRENJUに相談しながらも自分なりのベースラインを作れたかなっていうのは思いますね」
種谷「僕もそういう意味ではギター難しかったですね。今まで弾いたことのないようなジャンルのフレーズを弾いてるので」
シロ「ちょっとまぬけっぽさを求めたというか――」
種谷「言語化しづらいんですけど、僕がポップに寄るとただのポップになってしまうんですよね。でもそこでカッコつけてもしょうがないような曲ではあるんですよ。だからどこまでまぬけな要素を含んでカッコよ過ぎないギターソロとかも意識しながらやっていったら凄い難しかったですね。……正直デモの時点ではピンと来てなくて。あ、ごめんね」
RENJU「(失笑)」
種谷「全然ここでバチるつもりはないんだけど(笑)」
全員「ははははははははは」
■でもこの曲を作ったことでユレニワとしてまた一段階レベルが上がったっていうことですよね。
種谷「それはめちゃくちゃ思います」
3.Lilac
■この曲は元々シングル(※会場限定で発売された先行シングル『Bianca』)にも収録されていた曲ですが、凄くフォーキーでゆったりとしたリズムで進行していく曲で。リズム隊のおふたりはどうでしたか?
RENJU「これは結構こだわりが凄くて、もうリズム隊が肝だなっていうか。割とバラードというかフォーキーなんですけど、ありがちになっちゃダメだなっていうところがあったんで。それは凄く話し合って作りましたね」
レジナルド「この曲はリズムの気持ちいいところを突けるようなものをふたりで考えて。最後のアウトロとかも4つ打ちでやってる中、俺は結構フレーズ的にも動くんですけど、それもちゃんと当てはまってて。できてよかったなって安心しましたね」
RENJU「ベースが動いてる分、ドラムがあんまりいるとうるさいというか。引き算しながらもちゃんと個性を出していかないといけないっていう曲なので、僕はこの曲が一番難しかったかもしれないです」
■シロさんは家にあったフォークギターを弾き始めたところから音楽に興味を持ったという話を伺ったのですが、こういう曲調もご自身が元々持ってる側面のひとつではあるんですか?
シロ「元々自分はミドルテンポやスローテンポの曲のほうが好きなんですよね。だからそういう意味ではRENJUとかレジよりは苦戦はなかったかな……そこに精通しているのがみんなより自分はパイプが太いっていう感じもあったし。アレンジに関してはそういう印象ですね」
4.Cherie
■この曲もそうなんですけど、ユレニワをユレニワたらしめてるものって種谷さんの複雑なギターワークにありますよね。
種谷「ありますねぇ、絶対に」
全員「(笑)」
種谷「でもこの曲のギターフレーズで言うと、僕が好きな要素は結構詰め込めた曲であると思います。ただこの曲に関してはサビのフレーズの時に僕は絶対に邪魔しちゃいけないと思ったんですね。僕はサビでも結構単音のフレーズとか裏で鳴っているようなフレーズを弾いてたりするんですけど、この曲では土台でどっしり構えられるようなギターを弾けたらと思ってサビは結構シンプルな感じになってたりします」
■シロさんはこの曲はどういうふうに作っていったんですか?
シロ「“Cherie”は……自室で全裸でアコースティックギターを弾いてた時に、暑くて汗だくだったんですよ。そんな状況でジャカジャカ音を探してた時にたまたまAメロができ上がって。サビは元々は違うメロディだったんですけど、メンバーに投げたらいい反応が返ってきたんで、それを元に広げていったっていう感じですね。だからもう俺の汗とアレが……」
種谷「アレが?」
シロ「(笑)。まぁいろんな想いが基になってできたメロディですね」
種谷「元のサビがあって、途中でそれをもっと振り切ったサビにしようっていうふうになったんですよ」
レジナルド「一番悩んだよねぇ……」
種谷「でも元のサビのニュアンスを絶対に残したかったんで、最後に<シェリー 二人ならやれるさ>っていう部分があるんですけど、それが元のサビの冒頭のフレーズなんですよね」
■ちなみにこの曲は歌詞の世界観も最高ですよね。
RENJU「THE・シロっていう」
■サビの<君は俺の手を猫を撫でるように包み込んでくれるかい>というフレーズが、普段シロさんがライヴパフォーマンスで見せる姿からは想像できないギャップを感じて。
種谷「たぶんユレニワを聴く人がみんな歌詞をちゃんと見てくれたら、シロが弱い人間だっていうことは気づいてくれると思うんですね。そんなに人のことを全力で『頑張れよ!』っていうようなタイプのヴォーカルではないと思うし」
■でもだからこそ4人でバンドをやることで強くなれるというか。
シロ「そうですね。確かに自分は弱い人間だなっていう認識はあって。でも弱さを武器にして誰かに慰めてもらいたくてやってるわけじゃないんで。だからちゃんと強くなりたいなっていう想いを歌にするんだと思います」
5.PLAY
■この曲は結成当初からライヴでやってた曲だと思うんですけど、こうして新しい曲達と並んでみて改めて思うことはありますか。
RENJU「もう曲違くね?ってなる」
種谷「(笑)。当初はもうちょっと落ち着いてたりとかしてたんですけど」
■めちゃくちゃプログレな曲ですし、いい意味でこのアルバムの中のハイライトになっているというか。その中でもギターとベースの存在がとにかく強い曲だなと思ったんですけど、プレイヤーとしてはどうですか?
種谷「この曲に関しては再録するにあたって新しいことを――みたいなことも考えて要素として入れながら、やっぱり昔からの名残も残したいというか。唯一の昔からある曲なので、前々作に入れた曲の名残を残しながら頑張りましたね」
レジナルド「僕は結構いろんなことをやってて。この曲はライヴでも自由にやってるので自分らしさが一番出る曲だと思いますし、とてもとても楽しいです」
■ベース動きまくってますもんね。
レジナルド「めちゃくちゃ楽しいです(笑)」
■今回再録してみて、当時と比べた意識的な変化はありました?
シロ「この曲って元々作った時は愛があるからこそ人に対して怒りの感情が生まれるんだっていう想いがあって、それを歌にしたかったんですよ。でもどんどん歌詞に込めた想いというのが変化していって。だから今回のアルバムの中でもまた違った意味合いになり、これからきっとライヴで『ピースの報せ』の中に入っている“PLAY”を披露するっていうふうになっても、その時々で変化するっていう現象が起きるんじゃないかなって考えると、それはそれで自分でも面白いなって思いますね」
■ちなみに途中でデスボイスみたいな叫び声とかも入ってますよね。
全員「(笑)」
種谷「あれはめっちゃ入れたくて。僕発案なんですけど」
RENJU「ライヴとは全然違うアレンジなんですけど、あれを入れることによってライヴ感も出るしね」
■この綺麗に整ってるんじゃなくて、ちょっとその中に歪さのある感じこそユレニワらしいというか、アルバム自体がヴァラエティ豊かな作品ではあるんですけど、その中でも一番複雑さのある曲で。
RENJU「音源的な粗さが見どころだよね」
6.fusée 101
■この曲はインスト曲なんですけど、まずはタイトルの意味から教えてもらえますか。
種谷「このfuséeっていうのが、ロケットという意味なんですね。で、僕らがこのアルバムを作るにあたってずっと集まっていた部屋があって。それが101号室だったんですよね。つまり全部が101から発信されてきたものっていうのと、あとは“革命児”の中に<僕らの宇宙船は~>っていう歌詞があるんですけど、この101からロケットに乗せて発進していくみたいなニュアンスをつけたくてこのタイトルになりましたね」
RENJU「一番いいエピソードだね」
■実際にこの曲は打ち込みやボイスエフェクトも使っていて結構新鮮なアプローチになっているんですけど、作ってみてどうでしたか?
シロ「まずこのアルバムは10曲あるうち10曲すべてが生と死っていうところに向かっていくんです。その中でこの“fusée 101”は死への恐怖みたいなものを音で表すとしたらこうだろうなっていうような音楽になってると俺は思ってて。もの凄い幻想的だったり、生活音のような音が入ってきたり、現実と夢との狭間みたいなものが今の自分が思う死への恐怖感を表していて。で、歌詞カードには歌詞が載ってないんですけど、この曲では<Go ahead from spaceship>って一応歌っているんです。それで…………死への恐怖を歌ってるみたいな?」
種谷「着地できないのかい(笑)」
全員「ははははははははははは」
種谷「でもこの曲は元々はなくて、アルバムは9曲だったような気がします。この後に“まぼろしの夜に”と“Bianca”っていう曲が続くんですけど、その流れが綺麗だっていうことで“まぼろしの夜に”を作ったんですよ。でも“PLAY”から“まぼろしの夜に”っていう流れじゃなくて、そこに1個ドラマ性を噛ませたいなって個人的には思っていたので。そこでよりドラマチックな展開になるようにひと工夫した部分ではあります」
■今おっしゃっていただいた通りで、この“fusée 101”から次の“まぼろしの夜に”、そして“Bianca”までが凄くシームレスに繋がっていて。ここから先の曲も含めてアルバムの流れが一気に変わっていくという印象を抱きました。
種谷「この曲を起点にドラマが最後に向かっていくっていう感じですね」
シロ「まさにそれを狙ってたよね」
7.まぼろしの夜に
■この曲はこれまでよりも広い音像というか、スペイシーな感じがして。それこそロケットで飛んでいった広い空間みたいなイメージが浮かんできたんですけど。作曲はシロさんとRENJUさんによるクレジットですが、おふたりはどういうイメージで作っていったんですか?
シロ「元々はRENJUが大方のメロディなり曲のイメージなりを持ってきてくれて。で、さらにパンチをつけようとか、もっとシューゲイザーのようなアレンジにしたいなとかを考えたんですけど。歌詞の面で言ったら“fusée 101”が死への恐怖っていうふうになってるのに対して、これはどちらかと言うと生きることへの恐怖感みたいなものを歌ってるんですよ。そもそも何故生きることへの恐怖感に繋がったのかっていう話をすると、これは元々夢の中で出会った女の子との話なんです。今でも顔とか声をしっかり覚えてるのに、現実の記憶ではそんな子は存在しないんですよ。もう一度会いたいと思っても自由にそれを操れるわけではないし。でも当時は本当に自分の恋愛観が歪むくらい考えさせられた体験で、そういうことが発端で生きることへの恐怖感みたいなものに対する考えが生まれてこの曲を書いたんですよね」
■RENJUさんはどうでした?
RENJU「まず僕はシューゲイザーがどうしても作りたくて。元々ユレニワっていうバンドは全然明るいものじゃなかったんで、シューゲイザーは合うなと思ってたんですよ。ただノイズをたらふく使ったりすることっていうのは狙いじゃなかったので、あくまでもユレニワなりのノイジーな感じのアプローチをこのアルバムに欲しくて作ったっていうのはありますね」
■それこそラストサビの<Please~>のところは歌い方的にもシューゲイザーの要素を感じて。その前にファルセットも効いてますし、シロさんはシンガーとしてもいろんなアプローチがある曲だったんじゃないですか?
シロ「そうですね。<Please~>以降のラストの大サビって、これが夢だってわかってしまって泣きじゃくってるような心境を歌ってて……泣くっていうとネガティヴに捉えられがちなんですけど、そういう感情って一周回るとむしろ美しかったりする……そういうのを表現するっていう意味でも透き通るように広がる音像っていうのがピッタリなんじゃないかなっていうイメージで。だからそういうのも含めて聴き手の人に考えながら聴いてもらえたらいいなと思いますね」
8.Bianca
■この曲はシングル曲であり、ユレニワがライヴで見せるような荒削り感や衝動感といったものとは対極にある神秘的な楽曲だなと思ったんですけど。ご自身達の中では殻が破れたみたいな感覚はありましたか?
RENJU「イントロができた時に殻がバンって破れた感じはありましたね。もちろんメロディも歌もよかったけど……この曲に関してはマジでイントロができた瞬間だよね」
全員「(笑)」
種谷「でも本当にイントロは苦戦して……いつもイントロはギターリフ次第みたいな感じが僕らのバンドには結構あって。その中でこのイントロは難しいと。それこそさっき言ってたポップになり過ぎちゃったりもして、この哀愁とかを出すのが難しかったんですけど。その中でどうしよう……ってなってた時に生まれて」
RENJU「でもこれは絶対にどこにもないイントロだと思うんで。自信しかないですね」
■ちなみにこの曲は女性同士の恋愛を題材にしていますが、そもそもこういう楽曲を作ろうと思った経緯を教えてもらえますか。
シロ「……まぁ自分は愛において性別は関係ないなと思うタチで。純粋に今の自分がそれを唱えるとしたらどんな形になるんだろうなって思ってたのは強くありますね。それを試したかったし、それこそMVの表現はまさにそういうレズビアンの女性の恋を描いてる話ですが、別にこれは絶対に受け取り手がそういうふうに捉えなきゃいけないということでもないと思うし。俺は純粋にこの曲を客観的に聴いて、自分の過去を思い出してしまいそうになって笑っちゃう時もあるし(笑)。だからそういうあり方でもいいと思うんですよね。そうやって多種多様な面を持ってるから、もう成功じゃない?」
RENJU「……シロの語彙力エグいね」
全員「はははははははは」
RENJU「イントロがいいんだよ!とか言ってもサーッて流される(笑)」
シロ「(笑)。でも楽曲的なことにも触れると、この曲は特にトレモロ感だったりとかゆらゆらしてる感じを上手く表現できてるっていうのが、まさに心を揺さぶるっていうようなものに近い表現なのかなって。イントロの特徴的なベースの音とかもコーラスをかけていて、絶妙な気持ち悪さが心地いいなっていうふうにみんなで調整して作った曲なんで。心を揺さぶるっていうのはそういう意味でもあると思いますね」
■そういう点で行くと最後のポエトリーリーディングとかも気持ちいいですよね。
シロ「あれに関しては細かくここで解説したくない理由があって。あれにすべてが詰まってるから、ちゃんと聴いてねっていう感じです」
9.ラストソング
■この曲はバンドサウンドというよりもピアノやグロッケンの音色がキーになってる曲で。どうやって作っていったんですか。
RENJU「これは唯一、俺やシロが弾き語りで作って持ってきたみたいなのがなくて1から作ったんですよ。なので作曲クレジットもバンド名義にしてて。たとえばこの曲のAメロとかBメロは佳輝が考えたんですけど、考え方が超面白くて。全部ピアノで適当にやるんですよ。だから一発録りで決めた的なのがあったので、歌は超苦戦してて」
シロ「なんちゅう音階や!みたいな」
全員「(笑)」
■ということですが、種谷さんどうでした?
種谷「歌メロを考えるのが初めてだったんですけど……楽しかったですね。僕は半音とかの違和感が結構好きでギターフレーズとかには多用してたりするんですけど。そのニュアンスは今までギターフレーズでちゃんと使ってきてはいたので、ここで歌メロに使ってもユレニワ感から逸れるものにはならないなと思って。後から聴いてもユレニワっぽさが出てるんじゃないかなと思いました」
■レジナルドさんはどうでした?
レジナルド「僕はベースに関してなんですけど、こういう感じにしようかなっていうモチーフがあって。RADWIMPSのベースラインを主にしてやってみようかなと思って考えてて。それがぴったりハマったんでよかったなと思いましたね」
RENJU「4人ともRADWIMPSは通ってるもんね」
種谷「あと最後は……めっちゃ声重ねてるよね?」
RENJU「たぶん10以上は重ねてるね」
種谷「今までのようにスタジオで曲を作ってたら声を10個重ねて……っていうようなアプローチってあんまり生まれなかったかなって思うので、レコーディングならではの曲作りをできた象徴じゃないかなと思いますね」
RENJU「これは完全に宅録でしかできないよね」
■シロさんの譜割ってとても絶妙で、真似しようと思っても歌えないっていうことが多いなと感じたんですけど。この曲はどうでした?
シロ「ミソなのはなんか癖になるっていうのが大事だと思ってて。あ、この歌い方の癖がいいって聴き惚れてくれたら、これって何?っていういろんなクエスチョンマークやビックリマークがあったり、そういうのって俺は面白いと思うんですよね。ただ一辺倒でいい曲だねってなるのも悪いとは思わないけど、俺が目指すいい音楽像のひとつはそういう面白さが必要だと思ってて」
■そういう意味ではこの曲もそうですけど、このアルバムは音源作品として相当練り込んで作られた作品ですよね。
シロ「そうですね」
種谷「この曲にコアなファンがついてくれたら嬉しいな……」
10.阿呆
■そもそも“ラストソング”の後に曲がまだあるっていうのが個人的には不意打ちで。さらにここまでのアルバムの流れ的にも広い音像で壮大な曲調から、最後はこのバンドの初期衝動を感じさせるような全開のロックナンバーになってるっていうのが印象的なんですけど。この曲を最後に据えた理由やきっかけなどはありますか。
シロ「結果的に“ラストソング”とは言っているものの、それで終わりっていうよりは一番最後のエンドロールが“阿呆”っていう印象ですね。それに“阿呆”の曲調もただお別れだけじゃなく、次にも繋がるものなので。そういう意味は強く込めてますね」
RENJU「この曲を最後にしようってなった時に『あぁ、このバンドはマジでヤバいな』って思いましたね」
■はははははははは。
RENJU「もう何考えてるんだろうって思ったんですよ。聴いてもらえばわかるんですけど、芯は本当にロックなんだなっていうのをバンドメンバーながら思っちゃって」
シロ「意思表明みたいな感じもあるもんね」
RENJU「“ラストソング”であんなに綺麗な感じになったのに、最後にガーッ!ってキメるみたいな」
■ギャップが凄いですよね。
RENJU「やっちゃうんだそういうの⁉みたいな。ギリギリのところを行ってるのが、さすがウチらのユレニワっていうのは本当にありますね。これも結果的な話なんですけど、この曲を最後に入れたことによってまた1曲目に戻れるんですよ。リピートして聴いた時に話がちゃんとループしてるんだなというか。ハッキリ言って奇跡的なんですけど(笑)」
種谷「あと次作も作りたいぞっていう期待感もここで表せているっていうのはちょっと思いますね。物語性を考えたら別に“ラストソング”で完結はしていて。その中でレコーディングとかの話をすると、これだけ全員で一斉に録った一発録りなんですね。だから勢いもあるし、初の全国流通盤にこのギリギリ感を詰めることができてよかったです」
RENJU「本当にこのアルバムを通していろんなことをやりましたね。でもとりあえず今のユレニワのすべてをちゃんと詰められたなって俺は思います」
シロ「今の話にもあったように、このアルバムは全体的に、この記事に載せたい聴きどころはいろいろあるんですけど、自分の口からは言いたくない、お前ら見つけろよって思うような点が死ぬほどあるんですよ。正直みんなが思うより俺達は鬼才だと思うから、ちゃんとついて来て欲しいなってちょっと思っちゃうな。だからそういう試されてる感もヒリヒリしながらこのアルバムを聴き狂ってもらえたら俺は嬉しいです」
■ということで、長丁場に渡る全曲解説お疲れさまでした!ちなみにこのアルバムを出した後、ユレニワはどうなっていきたいですか?
RENJU「まぁ凄く簡単に言うと、ユレニワが今より多くの人に届いて欲しいなって思います。俺はこういう音楽を作ってるんだっていうのを知ってもらいたいがために曲を作ってるので。だからもっとユレニワっていう音楽が広まって音楽界が豊かになったらいいかなと思ってます」
種谷「僕は広がって欲しいっていうのももちろんで、その上で今作を超えるぞっていう気持ちで絶対次作も作りたいと思ってます。それが今持てる明確な目標ではありますね。そうなっていったらいいバンドになれるんじゃないかなって思います」
レジナルド「僕個人的には今の状況に全然満足してなくて。もっともっと上を目指してというか……普通にユレニワとしても進化していきたいし、自分自身ベーシストとしても進化できるように頑張りたいなって思います」
全員「(謎の拍手)」
■じゃあ最後にシロさんお願いします。
シロ「俺はこんなにクソ真面目にインタヴューに応えてましたが…………」
種谷「どうした急に(笑)」
シロ「でもこれからっていうことに関してはそんなに真面目に考えてなくて。それよりも自分の生活を全うするほうがいいと思うんですよね。普通にタバコを吸い過ぎないとか、お酒を飲み過ぎないとか、ちゃんと毎日お風呂に入るとか、そういう当たり前のことを気をつけて生きていきたいです」
■わかりました! ……で、バンドとしてはどうですか?
全員「はははははははははは」
種谷「でもそれってバンドも含めてだよね」
シロ「そうそう。そういう気持ちなんだよなぁ……だからなんて言ったらいいかわかんないなぁ……」
■土台からっていう感じですか?
シロ「そうですね。……バンド活動を続けるためにも、まず毎日の生活を全うする! ……それを頑張ります(笑)」
▼クレジット
テキスト=栢下 錬(MUSICA編集部) 撮影=関 信行
HP jureniwa.jimdofree.com
▼リリース情報
2020.02.19. Release
1st Album『ピースの報せ』
M1. 革命児
M2. 遺書
M3. Lilac
M4. Cherie
M5. PLAY
M6. fusèe 101
M7. まぼろしの夜に
M8. Bianca
M9. ラストソング
M10. 阿呆